メンタル相談サービスRemeに学ぶ、BtoCtoBで労働者のメンタルヘルスに寄与する可能性
Remeという、ウェブメディア&チャット相談アプリがあります。
たまたま日本の人事部でメンタルヘルスに関わるサービスを調べていて見つけて興味を持ちました。
このサービスを運営している株式会社NOMALの近藤雄太郎さんにお話する機会をいただき、ヒアリングさせていただいたのでその時の学びを記事にさせていただきます。
カウンセリングのビジネスモデルを変えそうな気がする
Remeを最初に知った時、パッと見た感じでとても丁寧なコンテンツを作っているなと感じました。
こころの悩みに関するメディアの運営と、臨床心理士などによるチャット相談のサービスをtoC/toB両方ともやっているよう。
カウンセリングって受けたことない方は知らないと思いますが、めちゃ高いんですね。
1時間4000円〜8000円くらいはするんです。
実力もピンキリで、自分と相性が合うかも分からないカウンセラーに対してそんなにお金払おうって思わないんじゃないかなーって僕は思っています。所謂情報の非対称性があるから、ユーザー側からはサービスの良し悪しが見えにくいブラックボックスだし。
そのため、カウンセリング概論と言う授業の期末テストの論述で、カウンセリングはビジネスモデルをフリーミアムや会員制のモデルに変えていくべき!という主張をつらつらを書いたりもしてました。笑
臨床心理士に気軽に安価で相談できるサービスとかあったら良いのになぁって思い描いてたら、まさにそれをやっているサービスがあったので、「アポとって話聴きに行きたい!」とずっと思っていました。
ちなみにこちらが近藤さんのプロフィールです。(HPから拝借しました)
1人1事業制!運営会社を調べてみたら、めちゃ面白かった
アポを取るために運営会社について調べてみると…。
株式会社NOMALという社員9名のベンチャー企業でした。
綺麗で洗練されていて、丁寧に作り込まれているHPに引きこまれました。
そしたら「1人1事業制をとっている」という記載が目に入ってきました。
うそでしょ面白すぎる。笑
よし、直アポして会いに行こう。
ということで、卒業論文と期末テストが終わってすぐ直アポしました。
問い合わせフォームに自己紹介とお話を伺いたい理由を書いて、送って、お祈りしてたらすぐ返事がきて歓喜。
オフィスは中野駅。
毎日中野ブロードウェイを通って通勤していたら散財しそうだなぁとか思いながら、早めに着きすぎたので近くのモスバーガーでご飯食べながら質問の精査をしていました。
- どんな想いで事業を作っているのか?
- どういう事業戦略をとっているのか?
- なんで分社化せずに1つの会社でやっているのか?
この3つが気になっていたので伺おうと決めました。
Remeのビジネスモデル
Remeのマネタイズポイントは、ウェブメディアの広告収入と、個人ユーザーのサービス利用料と、企業ユーザーのサービス利用料の3つ。
広告に関しては、Googl AdSenseを貼っているのみで純広はまだやっていないとのこと。
toCは儲からないし、対症療法になる
難しい現実なのですが、本当に困っている個人を救おうとすると儲からないんですよね。
医師の診療は、明確な答えが求められているため、答えを提示すれば良いので、効率化していくことができるかと思います。
でも、悩みの相談って大抵答えを求められているわけではないですよね。個別の事例性が高くて効率的な対応とかはできないことだと思います。本当に意義あるサービスを提供するためには、丁寧にコミュニケーションをとっていく必要があり、その結果マネタイズはなかなか難しくなるというのが現実だと思います。
また、どうしても対症療法になるという課題もあります。
明らかに職場の環境に問題があるのに、いくら相談サービスを使い続けても一時的な解決にしかならないですよね。
そのため、toCだけでなく、toBにもアプローチする必要があります。
toBからトップダウンでサービスを落としても、誰も使わない
これはRemeの話ではなくEAP(従業員支援プログラム)全般の話なのですが、相談系のサービスは企業向けだと使用率が1%未満だそうです。
事業主側が、何かあった時のリスクヘッジとして未然防止策を打っていたことを説明できるようにEAPを導入しているケースが多くて、実際のところ現場で使われて労働者が助かっているというケースはあまりないという実態があります。
なぜかと言うと、「人事に知られそうだから」です。
プライバシーは守られると言われていたとしても、どうしても自分のキャリアに影響が出そうだなとか心配してしまいますよね。
特に男性は利用率が低いそう。
基本的にtoBはサービス導入時の営業と、問い合わせがあった時の対応をするだけで、あとは利用率が1%なのでそこまでコストをかけずに収益化できることになります。
労働者のメンタルヘルスに関する本質的な課題の解決には繋がるサービスとは言いにくいなと思います。
BtoCtoBで労働者のメンタルヘルスに寄与する可能性
ということで、広告とtoBで安定的な収益化を図りながら、toCで本当に困っている人に価値提供できるサービスを創っているということを学びました。
社会性と収益性を両立したビジネスモデルを創るために、メディアとtoBを使う手法もあるんだなと。
そして、今後のビジョンを伺ったのですが…。
toCからお悩み相談のケースをためていってパイを広げていって、そのデータから問題のありそうな事業場を予測し、BtoCtoBでサービスを提供するモデルを創れないかと検討しているそうです。
衝撃でした。
もちろん通報を許可したユーザーからのみデータを集めて使うことになると思うので、実効性を高めるにはかなりユーザー数を拡大する必要はあると思いますが。
「個人向けの相談サービスをしているのですが、貴社に勤めているユーザーが◯人いて、職場での悩みを月平均◯回の使用頻度で相談しています。特に◯◯事業のユーザーが多いです。貴社向けにこの相談サービスの導入と、◯◯事業のマネージャー向け研修を実施してみませんか?」
みたいな提案したら、人事労務担当の方も見過ごせないですよね。
toBから人事労務や健康関連のデータにアクセスせずに、完全にCからの情報のみでこれだけの知を生み出せるデータベースにできたら、とても夢のある話だなぁと思いました。
本質的な課題の解決には、Cから攻めること。
それは譲れないことなのかもなと思いました。
競合の参入は、むしろウェルカム
最近、「社員の定着」を目的とした労務・メンタルヘルス領域のサービスは増えてきていて、市場が創られてきています。
リクルートとサイバーエージェントのGeppoとかもそうだし、エン・ジャパンもやってるし、メドピアのfirst callもtoBで展開しているし。
「健康管理」や「健康経営」の支援系だと、ドコモヘルスケア、デロイト、SOMPOリスクケアマネジメントなどなど。
各社が参入してきて、とてもホットになってきている印象です。
競合の参入はむしろウェルカムとのこと。
1つは、マーケットが広がった分、おこぼれが入ってきてむしろありがたいというくらいの規模だから。
もう1つは、利用者層がちょっと違うから。(つまり独自のポジションを取りきれるだろうということかと思います。)
個人的には、メンタルヘルスに関わるサービスに関しては、「大手企業だから」という信頼ではなくて、「誠実に丁寧なサービスを提供してくれる」という信頼感が勝るのではないかという気がしました。
価格競争でも負けないと思うし、品質も簡単には勝てないと思うし。
かっこいいなぁ。そんなサービス自分も創ってみたい。
1人でオペレーションどうやって回すんですか!?
更に衝撃だったのが、このビジネスをほぼ1人で回しているということ。
「デザイナー・エンジニアはどうしてるんだろう」って思ったけど、RCOでの経験があるからこそ、しっかり要件定義したて想定通りのアウトプット出していってクリエイティブ形にしていけるんだろうなぁと思ったり思わなかったり…。
事業間シナジーは求めていない!?
もっと衝撃だったのが「事業間のシナジーをそこまで求めていない」ということ。
(toBはクライアント共有できそうだし、採用に関しては親和性高そうですが)せっかく同じ会社でやってるのに、シナジー求めず別事業やるというのがとても不思議でした。
じゃあなんで1つの会社でやっているんだろうという素朴な疑問を持ちました。
その理由は、創業背景や大切にしているカルチャーに込められているみたいです。
HPに以下のような文言がありました。
大学時代のインターンシップで出会った3人で企業をした会社がNOMAL。
一見それぞれのキャリアは違い、立ち上げている事業も違いますが、すべては「自分の人生に期待できる」社会をつくるために活動してきました。そうして今、ここには自分の人生に誰よりも期待しているメンバーばかりが集まっています。
NOMALに働き、NOMALに生きる
センス良くて英語できる方なら気づいているかもしれないですが、
ノーマルって普通は「NORMAL」と書きます。
この会社の名前は「NOMAL」なので「R」がありません。
「R」は「Restriction=制限」のこと。
制限を可能性に、可能性を当たり前に。
そんな意味が込められているそうです。
素敵すぎる…。
収益性と社会性両立したビジネスモデルを創り切っているのが本当にかっこいいなぁというのと、アイセックで一緒にやってきた同期と、1人1事業制で会社創りたいなと思った1日でした。